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2011/10/19(Wed)

マルタのやさしい刺繍

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『マルタのやさしい刺繍』(原題:Die Herbstzeitlosen)2006年
Bettina Oberli (ベッティーナ・オーベルリ) 監督
Stephanie Glaser (シュテファニー・グラーザー) マルタ
Heidi Maria Glössner (ハイディ=マリア・グレスナー リージ
Annemarie Düringer(アンネマリー・デューリンガー) フリーダ
Hanspeter Mueller-Drossart (ハンスペーター・ミュラー=ドロサート) ヴァルター

<ほにゃくブログより転載し、一部追記しました>

横着して、あらすじを公式HPから引用させていただきます:
『スイスの小さな村、トループ村に住む80歳のマルタは、最愛の夫に先立たれ生きる気力をなくし、意気消沈しながら毎日をただ何となく過ごしていた。そんなある日、彼女は忘れかけていた若かりし頃の夢、“自分でデザインして刺繍をした、ランジェリー・ショップをオープンさせること”を思い出す。しかし保守的な村では、マルタの夢はただ周りから冷笑され軽蔑されるだけ。それでもマルタは友人3人とともに夢を現実のものとするために動き出す。スイスの伝統的な小さな村に広がる、夢に向かって頑張るマルタと彼女を支える仲間たちの夢と希望の輪。マルタの刺繍が、人々の心をやさしくあたたかく紡いでゆく―。』(以上、引用終わり)

******************************

 こちらは、ほのぼのとしたスイス映画。ただしドイツ語圏と言ってもスイスドイツ語なので、普通の標準ドイツ語とはかなり違います。マルタ役を演じた女優さんは、1920年生まれ(!) この映画を演じたのは86歳のときというからビックリ。夫の死にすっかりふさぎ込むものの、友人(←この友人も村では変人扱いされている女性なのです)の励ましに元気を取り戻し、若い頃の夢を実現するべく前向きに奮闘するマルタの姿がとっても輝いて見えました。エメンタールチーズで有名なエメンタールが舞台。いかにもスイスといった風光明媚かつ牧歌的な村で繰り広げられるプチ騒動が見ていてとっても楽しい。女性監督ならではの細やかな演出が随所に見られました。周囲の冷たい目にも負けず、若き日の夢を追いかけるマルタに、思わず「頑張れ!」と言いたくなります。マルタ以外の出演者も高齢の女性ばかり。みんなキラキラしています。女性ってやっぱり強いな~♪♪ 本国スイスだけでなく、海外でも大ヒット。高く評価されたそうです。ほのぼのとして、心温まるとっても素敵な映画です。


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2011/10/19(Wed)

ワン・デイ・イン・ヨーロッパ

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『ワン・デイ・イン・ヨーロッパ』(原題:One Day In Europe)2005年
Hannes Stöhr (ハネス・シュテーア) 監督
Megan Gay (ミーガン・ゲイ) ケイト
Luidmila Tsvetkova (ルドミラ・ツヴェートコヴァ) エレナ
Florian Lukas (フロリアン・ルーカス) ロッコ
Erdal Yildiz (エルダル・イルディズ) セラル
Peter Scherer (ペーター・シェラー) ガボア
Miguel de Lira (ミゲル・デ・リラ) 警官
Boris Arquier (ボリス・アキエール) クロード
Rachida Brakni(ラシダ・ブラクニ) ラシダ

 この作品は同じ日にヨーロッパの4個所で起こる出来事を描いています。
1.エピソード・モスクワ
 ヨーロッパのチャンピオンズリーグ決勝。スペインのデポルティボ・ラコルーニャとトルコのガラタサライが激突するとあり、両国のサポーターが決勝の地、モスクワのルジニキ競技場へ向けて続々と集まっています。興奮したサポーターで現地は異様な雰囲気。そんな中、ビジネスでモスクワを訪れたイギリス人女性ケイトが盗難に遭います。それを目撃した中年女性エレナが助けてくれるものの、言葉が通じずケイトは苦労します。何とか警察へ行ったものの、警官たちはサッカー中継に夢中。取り合ってくれません。ケイトが1人イライラする中、とっぷり日は暮れていくのでした…。

2.エピソード・イスタンブール
 ドイツ人のロッコは、イスタンブールを旅行中。狂言強盗で保険金をだまし取ろうと画策します。助けに現れたのは、なぜかドイツ語(それもコテコテのシュヴァーベン訛り)を話すタクシー運転手セラル。ロッコはセラルの運転で警察へ行き、ウソの被害を申告します。ところがイスタンブールの警官たちはサッカー中継に夢中。ガラタサライの試合が気になり、まともに取り合ってくれません。そして強面の警察官にすごまれ、逆に拘束されてしまうのでした…

3.エピソード・サンティアゴ・デ・コンポステーラ
 巡礼の地として名高い古都を訪れた敬虔なガボア。巡礼のフィニッシュとして、大聖堂をバックに写真を撮ってもらおうと、行きずりの人にカメラを託します。ところがその人物はそのままカメラを持ち去ってしまいました。カメラより、たくさんの写真を失ったことがショックでならないガボアは、警察に被害を訴えます。ところが警官たちはサッカー中継に夢中。デポルティボ・ラコルーニャの結果が気になって仕方がありません。対応してくれた警官は愛人といちゃつく始末。ガボアはただただ呆然とするばかり…

4.エピソード・ベルリン
 大道芸人のカップル、クロードとルシダ。町を渡り歩いては、大道芸で日銭を稼いでおりました。しかしお金も底を突き、2人の間にすき間風が吹き始めます。クロードは狂言強盗を計画。警官に被害を訴えますが…

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 モスクワ、イスタンブール、サンティアゴ・デ・コンポステーラ、ベルリンの4都市で繰り広げられるハチャメチャっぷりをユーモラスに描いた作品です。共通点は「チャンピオンズリーグ決勝」と「盗難」と「旅行者」。ただそれだけなのですが、サッカーに熱狂して仕事が手につかない警官たちや、異様な盛り上がりを見せるサポーター集団、セコいことを考えて小金をせしめようとする旅行者たちが、何とも滑稽で憎めないのです。大きな盛り上がりはないけれど、なぜか面白い。日本でも最近はサッカーですっごく盛り上がるようになりましたが、伝統の点ではヨーロッパにはまだまだ追いつきません。というか、彼らの熱狂ぶりは日本の比じゃないって感じ。それが各エピソードに現れています。様々な言語が飛び交い意思疎通に困るけど、サッカーという共通語でつながってるって感じです。流れる音楽がエキゾチックで素敵。サッカー好きの方にお勧めです。サッカーシーンは全くないんだけどねっ






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2011/10/18(Tue)

ソウル・キッチン

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『ソウル・キッチン』(原題:Soul Kitchen)2009年
Fatih Akin (ファティ・アキン)監督、脚本
Adam Bousdoukos (アダム・ボウスドゥコス)脚本、ジノス・カザンザキス役
Birol Ünel (ビロル・ユーネル) シェイン
Moritz Bleibtreu (モーリッツ・ブライプトロイ)イリアス・カザンザキス
Anna Bederke (アンナ・ベデルケ) ルチア
Pheline Roggan (フェリーヌ・ロッガン)ナディーン
Wotan Wilke Moehring (ヴォタン・ヴィルケ・メーリング)トーマス・ノイマン
Udo Kier (ウド・キア)投資家

 ジノスはギリシア系移民。ハンブルクで「ソウル・キッチン」という場末ちっくな食堂を経営しています。出す料理は冷凍食品ばかり。しかし安いため、そこそこ客は入っています。ところがある日、壊れた食洗機を運び出そうとしてギックリ腰に。ここから少しずつ歯車がズレ始めます。上海の特派員となった恋人のナディーンは中国へ赴任。一方、兄イリアスが刑務所から仮出所で出てきます。働き口があれば定期的にシャバへ出られるということで、無理に弟の店に押しかけてきたのでした。ところがジノスは災難続き。腰痛のためにまともに厨房に立てないだけでなく、滞納していた税金の取り立てでステレオのセットを差し押さえられてしまいます。同級生の不動産業者トーマス・ノイマンは「ソウル・キッチン」の土地に目をつけ、密かに営業妨害を画策。店を乗っ取ろうとします。

 そんな時、変人で流れ者の天才シェフ、シェインと出会います。「愛とセックスと魂と伝統は売っちゃいけねえ」がモットー。そんなシェインをスカウトしたところ、魂のこもったその料理にお客が殺到。傾きかけていた「ソウル・キッチン」は大繁盛します。ところが喜んだのもつかの間、遠距離恋愛中の恋人ナディーンの態度がよそよそしくなります。どうやら現地で恋人ができた模様。いてもたってもいられないジノスは、店を兄に任せて上海へ行く決心を固めます。一方、店を狙うノイマンが、イリアスを誘惑に誘うのでした。そして「ソウル・キッチン」は乗っ取られてしまいます…。

******************************

一貫して「移民」や「異文化」をテーマに映画を撮り続けてきたトルコ系ドイツ人監督ファティ・アキンのコメディです。これでもか、これでもかとトラブルがジノスを襲うのですが、なぜかめげないジノス。ひたすら正直に生きています。ところが兄のイリアスはトラブルメーカー。盗みで捕まり、服役中なのでした。昼間のみ仮出所が許されたものの、なかなか真面目に生きることができません。とにかくアホなんですな、この兄貴。だけどなぜかいとおしく思えるバカさ加減。演じるのは、今やドイツを代表する俳優の1人となったモーリッツ・ブライプトロイ。この人、こういういい加減な兄ちゃんの役がホントに上手。うさん臭さ全開なのです。だけど憎めない。ゴールドのチェーンをちゃらちゃら振り回す仕草が笑えます。

 風来坊のシェフを演じるビロル・ユーネルがとっても素敵。酒浸りなのですが、いったんナイフを手に握ると人が変わったよう。役作りのため、実際にシェフについて包丁さばいなどを習ったんだそうです。もっと出演させてほしかったなーと個人的には思ったのですが、監督がおっしゃるには、「どこからともなく現れ、いつの間にか消えていく」のが理想だったんだとか。流れ者であり、旅人ですもんね。終着駅はまだまだ先。自分探しの旅が続くのです。ビロル・ユーネルは、アキン監督の出世作「愛より強く」で一気に有名になったトルコ系の俳優さん。個人的にとっても好きです♪ 

 ナディーン役のフェリーヌ・ロッガンさんはモデルだけあってスタイル抜群です。その他、仁丹…ぢゃなかった、タブレット好きな謎の投資家とか、年中お船を磨いている「よっしゃ!」な船長とか、ボヨヨンな税務署の女性係官とか、骨折りケマルとか、とにかくキャラの濃ゆ~い人たちが脇を固めています。濃いです、ホントに。みんなおバカだけどヒュ~マン。あの溜まり場に集まる連中に、根っからの悪人なんていやしない。音楽好きでDJの経験もあるアキン監督らしく、音楽がとてもソウルでナイスです。人種偏見とか、異文化による衝突とか、そういったことでいがみ合うのがおかしく思えてくる、そんな素敵な映画です。とってもオススメ♪



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2011/10/18(Tue)

白いリボン

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『白いリボン』(原題:Das weiße Band)2009年
Michael Haneke(ミヒャエル・ハネケ)監督、脚本
Christian Friedel(クリスティアン・フリーデル)教師
Leonie Benesch(レオニー・ベネシュ)エファ
Ulrich Tukur(ウルリッヒ・トゥクル)男爵
Burghart Klaußner(ブルクハルト・クラウスナー)牧師
Rainer Bock(ライナー・ボック)医師
Leonard Proxauf(レオナルド・プロクスアウフ)マーティン
Josef Bierbichler(ヨーゼフ・ビアビヒラー)家令


<ブログに書いた内容を転載いたしました>

 時は第一次大戦開戦直前の1913年、物語の舞台は敬虔なプロテスタント信者が多い北部ドイツのとある農村。広大な農地を保有する男爵一家とそこに仕える家令(最初、家令ってナンジャラホイ?と思ったのですが、ドイツ語を聴いてナットク。Gutsverwalter。封建時代から存在する“Gut(=封建領主や貴族が所有する大農場)”を管理する人ですね。)や小作人、さらにその村の精神的な指導者である牧師とその一家、村の学校で教鞭を執る若い教師、村の医師、そして村人たちが主な登場人物です。

 のどかな農村で怪事件が相次ぎます。何者かによって張られた針金に馬がつまづき、乗っていた医師が怪我をします。小作人の妻は、男爵家の納屋の底が抜けて転落死。馬男爵家の幼い息子が行方不明となり、暴行を受けた状態で発見されます。男爵家のキャベツ畑が荒らされるという事件も発生。男爵夫人は子供を連れてイタリアへ行き、現地で愛人をつくります。一方、村の牧師は非常に厳格な人物。夕食に遅れた息子と娘を厳しく叱り、戒めのために白いリボンを腕に巻く儀式を行います。白いリボンは純粋・無垢の象徴だったのです。

 その間にも怪事件は続きます。男爵家の納屋が燃える事件が起き、中から首をつった小作人が発見されます。村の医師は不倫相手だった乳母をポイ捨て。その乳母の子供(父親はその医師)は何者かに連れ去られ、失明寸前という大怪我を負った状態で発見されます。

牧師として村人の尊敬を集める厳格な父親に子供たちはおびえています。その子供たちの行動に不信感を抱いた教師は、牧師の長男と長女を問い詰めるのでした…

*************************

…と、簡単にあらすじを書いてみたのですが、たぶん読んでくださる方は「???」ですよね。ネタばれしないように気をつけたいと思いつつ、作品の最後まで犯人は分からないのでネタもばらしようがないのです。一連の事件の犯人を見つけることが本作の目的ではなく、権威の象徴たる、厳格な父親(とにかく厳しい!)の陰でおびえる子供たちの屈折した心理を描くことが一つの目的なのかも。正直、よー分からん。当然、その鬱屈した不満のはけ口は別の所へ向かいます。美しい農村で繰り広げられるドロドロの人間模様。不倫や近親相姦など、「大人の醜い面」も淡々と描かれております。裕福な男爵家と、貧しい小作人の家庭。厳格な父親たち。純粋な目をしながらも、どこか屈折した様子の子供。高圧的な態度でねじふせられる子供たちの心の中で、何かがフツフツしているような印象も受けます。。。

 映画評を読んでみると、「この子供たちが、のちのナチ政権を支えた世代となる云々」といった記述も目立ちます。私個人としては、この物語とナチを結び付けるのは深読みしすぎな気もするのですが… ドイツ人とナチの歴史は切り離せないけれど、「ナチとからめると売れる」的な思惑が感じられ、「むむ?」と思ってしまったのですが、私の読みが浅いのかなぁ? いずれにしても、1回じゃ理解できない作品でした。そのうち、DVDでじっくり見たいと思います。

 ドイツ語じゃないと分かりにくいのですが、子供たちは父親をHerr Vater、母親を Frau Mutter と呼び、Siezen(敬語)しています。ま、日本でも江戸時代の時代劇では子供が「父上様、母上様」と呼び、敬語で話していますから、それと同じノリかも。昔お世話になったホストファミリーのお父さんが言ってたっけ。「私が子供の頃(=第二次大戦前)は父親が今と比べ物にならないくらい厳格で、子供にも敬語を使わせる保守的な家もまだまだあった」と言っていました。第二次大戦前は、まだそんな風潮が残っていたんですね。

 全体的に暗いトーンで物語は進みます。犯人捜しがこの作品の主目的ではないため、犯人の暗示はあっても分からずじまい。好き好きは人によって分かれると思いますが、私はかなり好き。10人がこの映画を見たら、感想が10とおり出てきそう。それくらい、奥の深い映画です。





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2011/10/04(Tue)

殺人者は我々の中にいる

*ブログに載せた日記を一部変更し、転載いたしました。

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『殺人者は我々の中にいる』(原題:Die Mörder sind unter uns)1946年
Wolfgang Staudte (ヴォルフガング・シュタウテ)監督
Hildegard Knef (ヒルデガルト・クネフ) ズザンネ
Ernst W. Borchert (エルンスト・W・ボーヒャルト) メルテンス医師

<簡単なあらすじ>
終戦直後、1945年のベルリン。かつて栄華を誇った大都市も、今や瓦礫の山と化していました。強制収容所で生き延びた写真家のズザンネは自分のアパートに戻ってきましたが、そこには知らない男が住んでいました。戦場から戻ってきたメルテンスという医師です。前線での辛い経験によって心に深い傷を負い、自暴自棄になって夜な夜な酒に溺れるメルテンス。そんな2人は壊れかけたアパートで共同生活を始めました。

 ある日、メルテンスは死んだと思っていたかつての上官と再会します。ブリュックナー大尉です。鉄製のヘルメットを鍋に作り替えて売る事業が大当たりし、彼は豊かで幸せな暮らしをしていました。のうのうと暮らすブリュックナーを見て、メルテンスは激しい怒りを覚えます。ブリュックナーはかつて、大勢のポーランド人の処刑を部下に命じていたのです。1942年のクリスマスのことでした。彼の命令で虐殺されたのは男性36名、女性54名、子供31名。いまわしい出来事からちょうど3年経ったクリスマスの晩、メルテンスは犠牲者に代わって復讐すべく、銃を手にブリュックナーの所へ向かうのでした…。(結末は、一番下の「続きを読む」をクリックしていただくと出てきます)

***************************

 第二次大戦後、ドイツは戦勝4か国(英米仏ソ)の統治下に置かれます。混乱の真っただ中にあったドイツで最初に作られた作品が、この作品。東ドイツ側(まだ「DDR、ドイツ民主共和国」は成立していませんでしたが)で作られた映画です。当時のドイツはまだ瓦礫の山でした。そんな中で撮られた映画は、「瓦礫映画(Trümmerfilm)」と呼ばれたそうです。本作の監督はヴォルフガング・シュタウテ。そんな「瓦礫映画」の代表作と呼ばれるだけあって、破壊し尽くされたベルリンの町並みが何度も映し出されます。撮影用のセットではなく、実際の映像であるため、非常にリアル。かろうじて建っている壁だけの建物。ガラスが割れ、枠だけになった窓。どこまでも続く瓦礫の山。すべて本物。どの風景を見ても、戦争の悲惨さがリアルに伝わってきます。

 ヴォルフガング・シュタウテは、戦後は東ドイツで映画を撮っていましたが、その後西ドイツへ移住。一貫して左寄り・西ドイツ批判の映画を作り続けたそうで、60年代の西ドイツでは冷遇されていたそうです。本作はナチが犯した罪を告発する内容となっており、タイトルも意味深。「殺人者」が複数形なのです。本編で殺人者として登場する将校は1人なので、この「殺人者s」が意味するものもおのずと分かってきます。制作にあたった映画会社は、ソ連占領地区で設立されたDEFA。当然、内容もかなり左寄り。罪のない住民を虐殺する命令を下したナチの将校は、その罪を悔いることもなく、戦後は事業で成功して豊かに暮らしています。ファシズムの罪と資本家…。そういった構図が浮かび上がってきて、何となく見ていてムムム~となりました。詳しくないワタシが偉そうに書くのははばかられるのですが、「ナチの戦争責任」に対する旧東独の考え方が、早くもここに表れているような…(私の解釈が間違っていたらご指摘ください)

 途中、ブリュックナーが手にしている新聞が大写しになります。その新聞の見出しは「200万人がガス室に送られた」といった内容。アウシュヴィッツという単語も見えます。ソ連占領地域に住んでいた人は、1946年の段階では既にこういった内容を知っていたんですね…。

 ある映画評は、20年代に一世を風靡した表現派映画の影響が見られると指摘しておりました。ワタシもそんな気がしましたです。追い詰められ、精神を病む主人公の描写にその片鱗が…。そして影の効果を駆使する監督だな~とも思いました。また、「ドイツ映画に伝統的な室内劇的要素も見られる」とも指摘されています。

 余談ですが、ズザンネ役のヒルデガルト・クネフがこの作品でブレイク。世界的に有名になったそうで、このあとハリウッド映画にも出演しています。ぬゎんと、ドイツで初めて映画内でヌ~ドになった女優さんだとか。カトリック教会が猛烈に抗議したそうです。

<おまけ 瓦礫映画ってナンジャラホイ?>
第二次大戦後、1945年から1948年にかけて製作された映画で、文字どおり国土が瓦礫ばかりだった時代に生まれたため、そのように呼ばれているんだそうです。当時のドイツは米英仏ソ4カ国による統治下にありました。ナチの下で国有化された大会社ウーファは解体され、その後国内に存在したのはソ連占領地域に設立されたDEFAや、西側の小規模な映画会社やスタジオ。ナチお抱えの映画人は多くが映画界から追放され、機材やスタジオも焼失した中、撮影は困難を極めたんだそうです…。「瓦礫映画」が描いたのは、廃墟の中で生きる人々の様子や、ナチが犯した罪などだそうです(← 実際に観たわけではないので、伝聞ですが)。


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